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アルネアラボラトリ+インターエナジー3年後にBERTの売上10億円を目指して業務提携

アルネアラボラトリとインターエナジーは、ビットエラーレートテスタ(BERT)の開発、マーケティング/販売で業務提携すると発表した。現在、両社とも製品としてBERTを持っているが、インターエナジーは12.5Gbpsまでの製品にフォーカスしており、アルネアは10G~40Gの製品を揃えている。両社は、現在の製品をベースに新製品を共同開発し、国内外の製造ライン向けに必要十分な機能を持つ製品を低価格で提供していく。提携の内容については詳細は発表されていないが、4月以降に発表された新製品については営業の窓口をアルネアに一本化する。また、それぞれが顧客からの引き合いを受けた場合、情報を共有した上でアルネアが担当する。新製品の売上げはアルネアの売上となり、新製品の製造、それに組み込む機能などの一部がインターエナジーの売上として計上されるようだ。既存製品については両社が窓口になる、というところまでが決まっているという。アルネアラボラトリの代表取締役専務 宮地邦男氏、インターエナジー代表取締役 渡邉浩文氏に業務提携の狙い、製品開発のロードマップ、ターゲット市場と市場認識などについて聞いた。

目標は年率100%成長

アルネアラボラトリ+インターエナジー業務提携

左から、インターエナジー代表取締役 渡邉浩文、アルネアラボラトリ 代表取締役社長 セット ジ イヨン、同代表取締役専務 宮地邦男の各氏。

 アルネアは、測定器業界に価格破壊を起こすとして、低価格の10G BERTを市場投入した歴史を持つ。これに続いて同社は、25G、40Gとハイエンド志向で製品開発を進めてきた。この路線が成功だったかどうかについて、アルネアラボラトリ代表取締役専務 宮地邦男氏は、提携後の製品計画にからめて次のように話している。「今回の提携1年目にマルチチャネル25G×4で、しかも多機能BERTを製品化する。今までは、できるパタンが少なかったが、提携することでいろんなパタンが出せるようになる」。宮地氏は、このように表現することで、現在までのアルネア製品の問題点を指摘し、今後の両社の製品計画にまで触れたことになる。アルネア製品は、測定器の価格破壊では成功したものの、ファンクションの数では広く顧客を取り込める領域に達しているとは言えないこともあったという認識だ。提携により、BERTのファンクションを増やし、ローエンドからハイエンドまでをカバーする製品ラインナップを充実させる。これによって、目標の10億円ビジネスが見えてくる、というのが両社共通の事業計画となっているようだ。BERTのファンクションについて、インターエナジー代表取締役 渡邉浩文氏は、「インタエナジーは12.5Gbpsまでを開発してきた。12.5Gbps以下は、機能的にいろんなパタンを発生、受信できる。今は、コンピュータ系のEthernetのパタンも発生させることができる。インターエナジー単独なら、この先には低価格化、小型化路線しかないが、両社が提携することで、アルネアの40G、100G製品も多機能化し、多機能化のロードマップが完成する。もちろん既存製品の低価格化も可能になり、成長路線が見えてくる」と話している。両氏の話から、インターエナジーはBERTにファンクションを乗せる開発を得意としており、アルネアは25G、100Gとハードウエア的な高機能化を得意としていることが分かる。

両社を業務提携に踏み切らせた市場認識

 アルネアとインターエナジーは、正式に業務提携を発表する前にも必要に応じて協力関係を構築しており。提携後のFOE2012展示会で、「両社業務提携によるアップグレード、高機能化の第一弾を披露するという。開発の狙いはマルチチャネル。12.5Gbps×12ch、25Gbps×4chなどの製品がすでにできあがっているようで、ターゲット市場は、最近増加傾向が顕著になってきている多チャネル伝送モジュール。データ伝送の世界では、シングルチャネル高速化と多チャネルによる大容量伝送が交互に現れる。現在の40G、100G伝送は、ライン側もクライアント側もマルチチャネル化することによって伝送容量を増やしている。このパラレル化の波に乗って、モジュールに使用されるVCSELやPDもアレイタイプのものが国内外のチップベンダから相次いで製品化されており、チャネルあたりのデータレートも1Gbpsから10Gbps、14Gbps、25Gbps、28Gbpsと増え、学会レベルでは40Gbps/chのVCSELの話も聞かれるようになっている。宮地氏は、先行きビジネスチャンスは十分にあると見ている。現在の状況を同氏は、「1990年代の光増幅器とWDM技術によって光通信市場が活性化した、通信バブル以前の市場環境に似ている」と話す。「今を逃すとチャンスは再び巡ってこない」という同氏の直感も、今回の業務提携を後押しした一斑の理由になっているようだ。

ターゲット市場は国内外の製造ライン

 アルネアとインターエナジーが提携することで、製品としては多機能、ハイエンドのBERTが誕生しそうだが、両氏ともターゲットはR&Dではないと言う。「25G×4の製品については、R&D向けの高機能BERTに対抗するのではなく、ライン向けに必要十分な機能を搭載していく。ただ、研究開発にも使える機能を搭載していることが必要と考えている。最終的には数が出るライン向けがターゲットだ。その前段階としてR&Dでも使える機能を搭載していなければならない。R&D用途は、大手測定器ベンダのフル機能で高価な製品が採用されることは分かっているが、その製品をそのままラインに持ってくると、コストエフェクティブにはならない。また、R&Dで必要とされていた試験の全てを製造ラインでやる必要もない。しかし、R&Dで使用した機能の一部を製造ラインにも使いたい。そこがわれわれの狙い目だ。R&Dの機能の一部を引き受け、製造ラインに展開するのがアルネアのミッションだと考えている」(宮地氏)。要約すれば、「製造ラインで必要な機能を低価格で提供する」となる。機能と価格の折り合うところに両社のビジネスチャンスがあるという考えのようだ。宮地氏の考えを渡邉氏の表現で繰り返すと、「ハイエンド機をそのまま製造ラインで使うと高価であるので、置き換えを提案していく。基本的には、必要な機能を追加してマルチファンクションにしていく。カスタマイズして製品を提供する」となる。では、アルネアとインターエナジーの考える市場はどこにあるのか。最近発表された光産業技術振興協会の「光産業の国内生産額/総出荷額」調査からも分かるように、光通信分野でも製造の海外移転が進行している。伝送モジュールでも10G以下の製品、励起レーザやチューナブルレーザも海外生産が一般的であると言ってよい。宮地氏は、「中国市場を重視する」と考えているようだ。「当社は、台湾にオフィスがある。マレーシアには工場がある。電気回路など量産品はマレーシア工場に移管している。近々に上海にもオフィスを作る。これは新年度中頃を予定している。それにプラスして、商社を通じても販路を展開してく」(宮地氏)。一方、渡邉氏は「中国では既にキーマンを押さえており、そのキーマンを足がかりにビジネスを展開している」。このように中国市場を対象にすると、製品の価格設定が難しくなりそうだが、この点について宮地氏は、「大手測定器ベンダの製品よりも安くないと意味がない。競合製品よりも20~30%ダウンは無理ではない。ライン向けは、台数が出るので、数量によって価格を考えていく」としている。アルネアの「測定器の価格破壊」という歴史は継承されているというコメントだ。現在、インターエナジーは社員6名で、協力会社を含めると20名で開発と営業活動をしている。アルネアは全社員23名、技術担当が17名、BERT専属のエンジニアが3名。その他、ソフトウエア、電気の担当者もBERT新製品の開発に加わる。アルネアのオフィスに両社共有のスペースを設け、共同開発を進めており、その成果はFOEで紹介される。宮地氏は、「ラインでたくさん使ってもらうことを目標にしており、プライオリティはR&Dではない。まずは実績作り、名前を売っていく」と意欲的に話している。

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